紀元前後にはすでに存在していたという、「インド更紗」。15世紀に大航海時代が訪れると、インドネシア、タイ、ヨーロッパ、そして日本など、世界中に広まりました。木型のブロックで木綿布に染色するこの技法は、インドでは英語で「block print」と、そのまま呼ばれています。
そんなインド発祥のテキスタイル「更紗」を、木型の作成や染色などすべて手作業で行っているのが、前回の記事で紹介した、バグルー村です。今回は、実際にどのような工程でインド更紗が完成するのか、ご覧いただきたいと思います。
まずは、デザインのベースとなる木型の作成です。かなりの職人芸。出来上がった木型は、何度も使用すると印刷が歪んでくるので、そうなるとまた同じものを作ります。
次に印刷。block printと呼ばれるように、木型にインクをつけて、ぽんぽんハンコを押すように染色していきます。このスピード、実はめちゃくちゃ早いです。僕もやらせてもらったのですが、やたら時間がかかるし、思ってる以上に柄がずれてしまうんです。
続いて、ベースになる木綿布全体を染色しているところです。写真だと伝わりづらいですが、6月のインドはめちゃめちゃ暑くて、日本人の僕は少し歩いただけで汗が吹き出す気温。お釜に火をくべているここは灼熱でしたが、この女性は全く汗をかいていません。流石です。
こちらは洗い場。染色した布を、色落ちしなくなるまで水で落とす作業です。「すべて手作業」といっても、まさかここまで手作業だったとは・・
最後に、干す作業です。乾燥機でも物干し竿でもなく、地面に直接干していますw 日光に当てることで、染料が布から落ちにくくなります。
さて、これらの工程、不思議に感じたところはなかったでしょうか?
実は、すべての工程を、別の人が作業しています。木型だけをつくるファミリー、染色だけをするファミリーといった感じで、更紗ができるまでの工程毎に専門の家族がいるのです。今回、僕を案内してくれたヴィジェンドラさんという人はいわばプロデューサーで、彼は16もの家族と提携していて、仕事が入るとそれぞれ適したところにギャラを払ってお願いするのだとか。つまり、村全体で協力して、伝統のインド更紗をつくっているということですね。
彼らの関係は、本当に素晴らしいです。ヴィジェンドラさんに案内されて彼らの工房や家に入れてもらったのですが、インターホンもなければ鍵もありません。ヴィジェンドラさんはノックもせずにw、ずんずん入っていきます。観光客にとってインドという国は、騙す、盗むが当たり前のように言われますが、この村はそんなこととは無縁のようです。
完成した更紗は、よく見るとデザインがちょっとずれていたり、染料が濃かったり薄かったり。現代のテキスタイルの何倍もの時間と手間をかけた、味わい深く、愛らしい木綿布です。
ネクタイ専門店TUNDRA(ツンドラ)が投稿いたしました。
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